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2009年10月 PreciousMetal&BaseMetal マンスリーレポート
9月~10月貴金属&非鉄金属+@マーケットレビュー&今後の見通し
9月の非鉄・貴金属市場は結局、8月下旬の悪い流れをそのまま引き継ぎ、なお環境は悪化した。中国の生産調整、在庫過剰懸念、米景気回復への不信感などが表面化し相場地合いは軟化。また為替の円高も急速に進行し、ようやく立ち直りはじめた日本経済にも再び黄色信号が点ったのが9月であった。そして10月現在もこの状況に変わりなく、世界中が中国の国慶節明け後の世界経済に注目し、期待しているのだが、IRRSGの市場研究チームでは信用不安をエネルギーにする金相場を除いて、9月から状態はさらに悪化するとの結論に至った。
(文・構成:IRRSG事務局長 YUJI TANAMACHI&市場研究チーム 編集:中村 創一郎)
金&銀(Gold&Silver) 白金族金属(PGM) 銅(Copper)
鉛&亜鉛(Lead&Zinc) ニッケル(Nickel) アルミニウム(Aluminium)
金、銀相場動向(Gold&Silver)
~最高値更新を経て未知の高原相場へ~
9月の貴金属相場はインフレ懸念、ドル安背景で着々と値を上げ、株価下落時には代替投資として金への資金流入が進んだ。現地9月8日にロンドン金相場はオンス当たり1,000$を突破。08年3月に付けた過去最高値の1033.9ドルに迫る勢いを示した。9月のロンドン金相場の平均値は前月比47.2$高の996.58$。国内金建値平均値は同24.1円高の2,949円(グラム当たり)。10月入り後はさらに上昇に弾みがついている。豪州中央銀行の利上げで景気回復が確認されたことと一方では原油取引にドルを用いないことが検討されているとの報道で基軸通貨としてのドルの信認が低下し、なおドル安は進み、インフレ懸念も高まったことで金相場は現地10月6日にNY市場でオンス当たり1045ドルの史上最高値をマークした。金についてはきわめて強気な見方が支配的であり、バークレイズキャピタルは最高値の目標を1500ドル、他では2000ドルといった強気予想が噴出。いずれにしても不安心理が強い今の状況下で上がり続けるのは金しか見あたらない。
NY銀相場の9月平均値は、前月比210セント高の1,650.20セント(トロイオンス当たり)となった。国内建値は同4,322円高の4万9,194円であった。銀も金の高騰につられる格好で上昇。引き続き堅調とみる。
【暴落の不安もある】
ただ、さしもの金もいいことづくめで全く不安がないわけでもない。大口投資家の買い越しが過去最高まで膨らんでおり、テクニカル面で悪化すればいきなり暴落する恐れもある。そしてこれは金のみならず原油、金属など商品全てに共通するリスクである。
金はドイツ銀行がドル安やインフレ懸念を背景に2010年1150ドル、2011年1200ドルとの見通しを示し、先高観が強い。ただ先物市場での買い過剰感が強いことに加え、米政府の自動車買い替え支援策の終了などで経済指標が弱い内容となった。政策効果が薄れて景気回復期待が後退し、株安が続くと、リスク回避の動きが出て
調整局面を継続する可能性が出てくる。
世界13カ国に上場している金ETF(上場投信)の現物保有高は1日に1291.63トンとなり、前週末比2.38トン増加した。ニューヨークで1.22トン、ロンドンで0.07トン、南アで1.09トン増加した。ニューヨーク市場では原油高をきっかけに買いが入った。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)建玉明細報告によると、22日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは23万6749枚(前週23万5647枚)に拡大した。3週連続で過去最高を更新し、買われ過ぎに対する警戒感が残る。ドル安や将来のインフレ懸念などが支援要因だが、テクニカル面で悪化すると、まとまったストップロスの売りが出て急落のきっかけとなる可能性がある。
9月のトルコの金輸入は1.7トンとなり、前月比86%、前年同月比94%減少した。金価格上昇やスクラップ売却の増加が主因となった。一方、9月のインドの金輸入は35~40トンで前年同月の54トンから約30%減少した。需要期に入ったことから5カ月間で減少幅が最も縮小したが、10月半ばにディワリ(インドの正月)が終了すると、需要がピークを迎え、下げ要因となる可能性が出てくる。
| 金・銀 相場推移表 | |||||
| 金 | 銀 | ||||
| 為替TTS | 国内建値平均 | ロンドン市場 | 国内建値平均 | NY・COMEX | |
| (円/ドル) | (円/g) | ($/toz) | (円/㎏) | (¢/toz) | |
| 2009年1月 | 91.41 | 2,522.00 | 858.69 | 34,222 | 1,138.60 |
| 2月 | 93.43 | 2,823.95 | 943.16 | 41,208 | 1,304.70 |
| 3月 | 98.98 | 2,944.14 | 924.27 | 42,716 | 1,308.80 |
| 4月 | 100.12 | 2,868.85 | 890.2 | 40,403 | 1,250.20 |
| 5月 | 97.28 | 2,970.94 | 928.64 | 45,121 | 1,411.00 |
| 6月 | 97.57 | 2,971.59 | 945.86 | 46,978 | 1,462.50 |
| 7月 | 95.51 | 2,863.91 | 934.23 | 41,859 | 1,337.50 |
| 8月 | 95.91 | 2,924.95 | 949.38 | 44,872 | 1,440.20 |
| 9月 | 92.53 | 2,949.05 | 996.58 | 49,194 | 1,650.20 |
白金族金属(PGM)~弱含み~
ETFセキュリティーズのETFの現物保有高(メタル・セキュリティーズ)は10月1日時点でプラチナ11.22トン、パラジウム16.47トンとなり、前週末比でそれぞれ0.08トン増、0.30トン減となった。パラジウムは9月29日に過去最高16.78トンを記録したが、30日に売られた。米政府の自動車買い替え支援策が終了したことで自動車販売減少に対する懸念が残り、ポジション調整の売りが出たとみられる。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)建玉明細報告によると、9月22日時点の大口投機家の買い越しはプラチナが1万8224枚(前週1万6521枚)、パラジウムが1万3164枚(同1万2474枚)に拡大し、過去最高を更新した。
東京プラチナは年初の急落が一服したのち、景気回復期待などを背景に反発したが、4000円前後が堅い抵抗帯となった。4月13日4032円、6月8日4036円、8月7日3952円、9月17日3956円で上値を抑えられた。景気刺激策の効果が薄れて景気回復期待が後退すると、リスク回避の動きでプラチナも下落するとみられ る。ファンド筋の手じまい売りが進むと、7月安値3227円も意識されそうだ。
一方、長期的な強気見通しには変わりはない。ドイツ銀行は「投資需要の堅調に加え、中国の宝飾需要の増加や、新興国の新車販売増加が先進国の減少を相殺すると予想している」としており、プラチナは2010年が1394ドル、2011年が1500ドルと予想された。パラジウムは2010年が321ドル、2011年が360ドルとされた。
| 白金族相場推移 | |||
| プラチナ | パラジウム | ロジウム | |
| NYMEX | NYMEX | US・spot | |
| ($/toz) | ($/toz) | ($/toz) | |
| 2009年1月($/toz) | 957.55 | 184.99 | 1,157 |
| (円/g) | 2,837.78 | 588.06 | 3,400 |
| 2月 | 1,044.37 | 207.15 | 1,178 |
| (円/g) | 3,145.28 | 650.56 | 3,539 |
| 3月 | 1,084.33 | 204.71 | 1,170 |
| (円/g) | 3,460.57 | 678.33 | 3,723 |
| 4月 | 1,168.26 | 229.19 | 1,343 |
| (円/g) | 3,804.85 | 767.5 | 4,323 |
| 5月 | 1,138.79 | 230.74 | 1,417 |
| (円/g) | 3,600.11 | 765.11 | 4,432 |
| 6月 | 1,223.22 | 247.1 | 1,467 |
| (円/g) | 3,866.45 | 803.86 | 4,602 |
| 7月 | 1,161.59 | 250.76 | 1,487 |
| (円/g) | 3,513.82 | 796.59 | 4,566 |
| 8月 | 1,251.09 | 279.29 | 1,670 |
| (円/g) | 3,872.48 | 882.86 | 5,150 |
| 9月 | 1,298.37 | 295.85 | 1,650 |
| (円/g) | 3,848.05 | 902.63 | 4749 |
― L M E メ タ ル の 大 勢 総 括 ―
10月入り後の非鉄市況は9月の軟地合いをそのまま引き継ぎながら、相変わらず方向性に欠けた展開が続いている。世界経済、株式、為替、原油など外部市場および相場環境は強弱材料が交錯しており、上がり続けることもなく、また下がり続けることもないボックス圏内での値動きに終始。ただ足許ではドルの信用力低下によるドル安で再びコモディティー市場に資金が還流し、特に信用不安に強い金は10月6日に史上最高値のトロイオンス当たり1045$(NYコメックス)をつけ、翌7日にも高値を更新した。この金相場の高騰につれて非鉄金属も上昇し、一見すると再び力強い上昇軌道に乗ったかのように映るのだが、少なくともこの10月に関しては楽観視できない。
国慶節明け後の相場に期待する向きは多いが、まだ払拭できない世界景気の不安、個人消費の伸び悩み、中国では「家電下郷」政策の一服、貸出超過による銀行の不良債権増、政府の金融緩和政策の修正、米金融機関の危機再燃懸念など不安材料は数多い。これらリスク要因によって株式、商品から資金が流出することが考えられ、再び相場は下落するのではないかと考えられる。勿論この予想が杞憂に終わることが最も望まれるのだが、国際市況を取り巻く環境は厳しいのが実情だ。また、日本経済にとって痛手となる為替の円高も80円台半ばまで進むとの予想があり、この10月内はいわゆる本格的な「二番底」を経験する可能性が高いとみる。
銅(Copper)~強弱材料交錯~
9月内はLMEで6000ドル台を維持、NY市場でもポンド当たり280㌣台を維持していたことで、月平均値としては9月は前月比ほぼ横ばいの6196ドルとなった。銅建値は㌔600円台をキープしたが、10月に入って590円、そして580円(8日)と続落。9月の連休明け以降に全ての商品市況のセンチメントが悪化したようにカッパーも下落。米住宅市場の伸び悩み、LME在庫の増加が嫌気され、24日には5939ドルと6000ドルを割り込む。しかしながら中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)が堅調な伸びを示したことで再び6000ドル台を回復。その後も小幅なupdownがみられるもBHPビリトンがチリに所有するspence銅鉱山で労使交渉が開始され、難航しているとの報を受け上伸。LME在庫は34万㌧台と5月中旬来の水準まで膨れあがっているが、spence鉱山での労使交渉、ドル安背景、インフレヘッジとしての商品投資という強材料により10月初旬現在も6000ドル大台は堅持している。
ただ、気になるのは中国での在庫過剰懸念。中国は少なくとも8月までは銅地金の輸入を前年比2倍程度の水準で旺盛に続けており、スクラップの輸入もそこそこの水準が続いている。電気銅の輸入量は1-8月累計で229万4346トン(前年同期比166%増)、銅スクラップの輸入量は1-8月累計で257万8528トン(前年同期比34%減)。これら原料在庫のだぶつき感から中国が放出に回るとなれば相場圧迫要因となる。
ただし、強材料とすれば先のBHPBのspence銅鉱山での労使交渉に続いて、同じくBHPBのエスコンディダ鉱山での労使交渉、さらにはCODELCOのAndina鉱山、NORTE事業所と大型鉱山での労使交渉が控えているため、交渉がこじれることになれば相場は上向くことになる。
さりとて、これは銅に限ったことではなく、また金属に限ったことでもなく商品全般にいえるのだが、世界景気回復への不信感、中国の金融緩和策の方向転換、米金融機関の危機再燃といった再びマクロ経済が落ち込む「地雷」もそこかしこに存在するため、9月に引き続いて高値警戒、下値警戒が必要。経済全体の潮流が下に向くことになれば商品、金属、カッパーも下値を試す展開になろう。10月内は安値4800ドル、高値6200ドルと予想する。アク抜けして本格的な上昇気流に乗るのは11月中旬頃か。
下グラフはここ1年間のLMEカッパーの相場と在庫の推移。

鉛&亜鉛(Lead&Zinc)~高値一服~
8月中旬に発生した中国の鉛中毒事件による鉛亜鉛供給減懸念もいまやほとんど材料視されておらず、鉛にいたっては9月に中国が余剰在庫を非関税の「鉛板」として東南アジアに輸出したため、同エリアの鉛地金プレミアムは100ドル以下に下落。それでも実需が強いため、鉛は2000ドル台をキープ。亜鉛も1900ドル台で底堅く推移している。国内建値は鉛が9月平均㌔247.5円、亜鉛は214.2円。足許は鉛が236円、亜鉛が210円で推移。
亜鉛は中国メインで需要は伸びており、今後も堅調に推移していくと予想されているが、2005年末以来という高水準のLME亜鉛在庫(43万5325トン=10/7現在)は気がかりなところ。10月内は安値1700ドル、高値2100ドルとみる。
鉛は9月8日に今年最高値の2440ドルをつけ、その後は達成感から売られ水準を落としたものの、10月7日現在で2100ドル台と歴史的には高値圏で推移している。中国での鉛精錬所強制閉鎖報もいまや全く材料視されず、供給不安も全くの杞憂に終わったなかでの2000ドル台は立派といえよう。まだまだ鉛バッテリーという古典的需要は健在であることを示している。ILZSG(国際鉛亜鉛研究会)統計による鉛の世界需給バランスは09年は10万8千トンの不足とみられている。鉛の10月は安値1800ドル、高値2400ドルと予想。
グラフはここ3ヶ月のLME鉛相場&在庫の推移。

ニッケル(Nickel)&SUS Scrap~調整期続く、下値探り~
LMEニッケル価格は8月平均の1万9642ドルから9月は1万7473ドルまで下落した。全体的にメタルが軟化するなかでもニッケルの下げが目立ったのは、ニッケルの最大需要分野であるステンレス、スーパーアロイの需要の盛り上がりに欠けることであり、ステンレスについては中国での在庫過剰感(流通在庫は19万トン以上)、伴って日本においては板系輸出の急減という形になって表れ、市場センチメントは急速に悪化した。7月、8月の快晴から9月は曇天へと変わった。このニッケル価格の下落と為替の円高進行でSUS304系スクラップ価格も大胆に引き下げられ(㌔185円→165円→145円)、先安とみた業者の在庫一掃もあり9月から10月初めに至るまでトータルで40円の下げが講じられた。スクラップ関係でもうひとつ付け加えると、今10月の韓国POSCO社の国内価格は円価で㌔165円相当となり、一見すると日本市場よりも高く、好条件のように映る。しかしながらPOSCO社のスクラップ購入量は減少している、という背景には光陽で自社生産しているフェロニッケルの消化優先になっているからであり、今現在はPOSCOにおいてはスクラップのプライオリティはそう高くないとみる。従って日本からの韓国向け輸出業者も苦慮している。
ニッケルおよびステンレス業界での最大の関心事は製品需要、市況がどうなるか、原料需要はどうなるのか?の2点に尽きる。その製品市場のほうだが牽引役の中国はそこそこに需要はあっても非常に安価である。日本からの304冷延コイル価格はCIF㌧2500ドル前後(10月上旬現在)という安さ。欧米諸国のステンレス生産は増加に転じているようだが、需要あっての増産なのかどうかはいまひとつ不鮮明。成長国でのステンレス需要は伸びているのだが、いかんせんまだ供給過剰感が強いと見受けられる。日本国内でステンレス需要が盛り上がらないのは、やはりステン(Ni系は特に)は設備投資など構造材関係が伸びないとボリュームは増えない。国内で伸びている家電、車はステンの場合においては大きな需要増にはつながりにくい。10―12月期のステンレス需要見通し(経産省統計)では前年同期比15%増の70万4400トン(板系56万2800トン、条系14万1600トン)と市場環境が悪化しはじめた08年第3四半期を上回るレベルでは策定されているが、今回は不安定要素が多く、見通しと実績は大幅に違ってくる可能性がある。ただ、ステンレス業界の場合「売れなくとも作る」場合が多々あるため、そこはなんとも判断しがたいが。
ニッケルじたいではまだ完全解決に至っていないValeinco社のサドベリー&ボイジーズベイでのストライキが相場材料として残っている。2010年のニッケル、ステンレス鋼需要回復に向け、供給不安が台頭してくる、とのことで買われ、不意に瞬間的に相場が上昇することもあるが、その上げが長続きしないのが9月以降の特徴的な値動きである。ニッケル独自の需給材料で相場が上昇していくことは考えにくく、やはり全体的にメタルが盛り上がってくるなか、商品市況が盛り上がってくるなかでのツレ高、あるいはツレ下げという追随型のパフォーマンスが続くとみる。12万トン以上に増加しているLMEニッケル在庫も重く、相場の上値圧迫要因になっている。12万トン以上の在庫水準は1995年2月以来、14年ぶり。ちなみに当時の相場は8500ドル前後だった。
10月内のニッケル相場予想は安値1万5000ドル、高値21000ドルとみる。
下のグラフは1989年から今年までのニッケル相場推移。

アルミニウム(Aluminium)&アルミ合金(Alloy)~弱含み~
先月はアルミの2000ドル回復から2300ドルトライと強気予想をしていたが、結果的に予想は外れ、8月平均の1934ドルから9月は1834ドルと100ドルダウンとなった。自動車の生産は新興国で増え、先進国でも回復基調を辿っていたのだが、もうひとつの大きな需要分野であるサッシなどの建築材が伸びないことが響いた。これは日本でもそうだが、米国でもまだ住宅市場は盛り上がりに欠ける。フリーターレベルの収入でも家を建てていたのが2~3年前の米国だが、完全に失業したとあってはさすがに住宅需要も伸びない。この住宅不振が今後もアルミ相場の上値圧迫要因になり続けるだろう。
9月中旬に開催されたメタルブリテン誌のアルミカンファレンスでは相場の見通しとして1800ドルの上下200ドルで推移、という無難な予想だったが、アルミ新塊もまた、独自の需給材料で動くのではなく、全体的なマネーフローのなかで随伴して動いていく格好になるとみる。漸く減少してきたLMEアルミ在庫は好材料だが、10月7日時点でまだ450万トン以上あり、史上最高水準の在庫量である。この在庫もよく言われるように融資担保としての物量で、実際には使えない在庫ともいわれているが、いずれにしてもどこかで清算しなければならない。金相場、PGMの項でも述べたが、今の商品市場は全体的に買い越しが多く、何かキッカケがあれば一気に雪崩をうって大規模な手仕舞い売りが広がる危険性はアルミにもある。そのキッカケが米金融機関のさらなる破綻懸念が表面化したときに引き金が引かれるような気もするこの頃である。
下は最近3ヶ月のLMEアルミ新塊相場の推移グラフ。

アルミ合金(再生塊)市場は自動車の生産回復(10月-12月期の生産計画は前年比95.8%の248万5800台まで戻す)に伴って合金メーカーの生産も増加。2009年度の自動車生産計画ではKDセット含め1500万台(前年度比10.9%減)と策定されており、なかなかに明るい未来も見えていたのだが、9月に入っての円高進行、そして10月現在ではさらに85円近くまで円高は進むといわれている。円高は自動車輸出需要を直撃する。すでに日産自動車は生産調整を発表。他社も想定外に円高が進めば日産同様に生産調整に入る可能性は高い、最大手のトヨタは来年1月からの生産は未定、と聞く。
■ 製品価格の伸び悩み、円高が相場を圧迫
日本のアルミ合金市場にとって、また原料業界にとっても悩ましいことは、合金製品価格の伸び悩みである。今期(10-12月期)の自動車メーカー向けADC12価格は平均値で㌔200円超えを狙っていたのだが、折悪く対自動車メーカーとの交渉が始まる直前(9月上旬頃)に、国際アルミ市況が下落したことで、残念ながら平均での200円超えには至らなかった。多くが希望価格よりも15円ほど下で決まった模様。お隣の韓国では現代自動車向けで2100ドル、円価にして約200円で決まったということで、日本からのD12輸出、原料スクラップの輸出は若干ながらも増える可能性は大。
一方で、足許では円高を利用したD12の輸入がにわかに増えてきている。中国産D12は日本国内のD12市場価格よりも安い㌔170円前後で入着。ドルベースでは㌧1900ドル。中国側も安売りする気はなく、為替が円高に向かえばドルベースは下げないというスタンス。しかしながら中国最大の合金メーカー、上海シグマは重慶で60万トン規模の合金工場を立ち上げるとのことで、増産に拍車がかかる。中国での合金生産は260万㌧といわれているが、数年内に400万トン近くまで増える可能性が高い。中国の圧倒的な供給力により2本のアルミ二次合金業界もいずれ合理的な選択をしなければならないだろう。中国のアルミ再生塊の輸出は別表の通りで、最大のお得意様は日本である。
ベースメタルのロシア塊(AK5M2)は1670ドル前後で㌔155円前後の単価。先行き不透明なため積極的な購入は控えられているが、つい2~3週間前まで国内品で㌔160~165円で動いていたことから考えると相当に割安である。
■ 再びデフレスパイラル?
この安価な輸入品が確実に国内D12価格の上値を圧迫し、原料スクラップ価格を押し下げることに作用すると思われる。アルミスクラップ価格は9月後半で㌔5円程度下がり、10月に入りさらに10円程度下がっているが、今後、さらなる円高の進行、自動車の生産調整、輸入品(製品、原料ともに)の増加というマイナススパイラルがきっちり形成されることになれば、原料スクラップの下押しは避けられまい。
合金メーカー各社の原料在庫は意外に余裕がある。輸入品が入ってきている(現在メーカーに納められているロシア塊は160円前後のもの)ということと、なんといっても国内スクラップの入荷が増えていることがまたメーカーの購買担当者指数を強気に持ち上げている。アルミ合金業界、アルミスクラップ業界にとって今最も注意すべきは為替の円高であろう。仮に85円まで進むようなことになれば業界の市場心理は冷え込んでいくことは必至。
(文・構成:IRRSG事務局長 YUJI TANAMACHI&市場研究チーム 編集:中村 創一郎)
